吹き出しのしっぽに隠れる「数学」

このたび、本塾の連絡手段として、チャットアプリでおなじみの画面風にメッセージのやりとりができるシステムを開発し、無事、既存のシステムに搭載することができました。業務の合間の時間を使いながら、私自身の手で少しずつ進めてきたものです。作れるものは自分の手で作りたいというこだわりがありますので、市販のコミュニケーションツールに頼らない形を選びました。

そもそもの発端は、ご家庭との連絡をどのような形で行うのが最も良いのだろうか、という問いでした。たとえば、個人のLINEアカウントを塾の携帯電話とつなぐという方法も考えられますが、私にはどうしても抵抗があります。保護者の方の私的な連絡手段の中に塾が入り込むことになりますし、塾からの連絡が、日常のさまざまなやりとりの中に埋もれてしまうことにもなりかねません。塾に関する情報は、塾のシステムそのものに集約されている方が、ずっと分かりやすいのではないかと考えました。

自前で開発したことによる利点もあります。送信先は必ず塾長のみとなりますので、宛先を取り違えて別の方に送ってしまう心配がありません。また、市販のツールを導入するとなれば一定の費用が継続的にかかりますが、自社で開発したものであれば、塾生と保護者の皆さまに無償でお使いいただけます。

ところで、最初に試作したチャット画面は、ごく素朴な角丸四角形が並ぶだけのものでした。これはこれで、機能としては十分に成り立つのですが、実際に触ってみると、どうにも味気ないのです。日頃使っているアプリと見た目が大きく異なると、それだけで操作に迷いが生じてしまいます。使い慣れた道具に近い形であることは、それ自体が親切さなのだと考え直し、もう少しおなじみのチャットアプリ風に寄せてみることにいたしました。結果、相手のアイコンが表示されないことやスタンプのような機能がない点を除けば、違和感なくお使いいただけるのではないかと思います。

さて、見た目の工夫として最も凝ったのが、吹き出しの「しっぽ」の部分です。

一見すると些細な装飾ですが、この小さな部分の形が、画面全体の印象を決定づけます。三角形を二本の直線で描いてしまうと、付け根がどうしてもカクついて見えてしまい、あの自然な柔らかさが出ません。そこで、図形を直接描くのではなく、二つの図形の引き算として作ることにいたしました。

まず、吹き出しの角から外側へ、吹き出しと同じ色の18×18の正方形を張り出させます。この正方形は、吹き出しに接する内側の角だけを半径14で丸めておきます。この時点では、角に丸みのある四角い出っ張りにすぎません。次に、その出っ張りの外側半分を覆うように、背景と同じ色の9×18の長方形を重ねます。この長方形にも、吹き出し側の角に半径9の丸みを与えておくところが要点です。

背景色の板が上に乗ることで、見えている部分だけ出っ張りが残ります。残った領域の輪郭は、内側が半径9の円弧、外側が半径14の円弧という、曲率の異なる二つの円弧で構成されることになります。これによって、付け根が自然にすぼまった、あのなめらかな尾が現れるのです。

吹き出しのしっぽの部分

ここで役に立っているのが、数学の考え方です。角丸正方形を集合A、角丸長方形を集合Bとすると、画面に見えている図形は、AからBを取り除いた部分、すなわちAとBの差集合として表されます。中学校の数学では、ベン図を使って集合の重なりや、Aには含まれるがBには含まれない部分を考える場面がありますが、まさにあの考え方をそのまま図形の作図に応用しているわけです。また、丸みの半径が9と14という異なる値であることによって、二つの円弧のカーブの緩急に差が生まれ、それが自然な曲線を生み出します。円の半径が大きいほど、その弧はゆるやかになるという、円について学ぶ内容がここで生きてきます。

教室で生徒たちに、「数学は何の役に立つのですか」と尋ねられることがあります。こうして自分の手で何かを作ってみると、その答えは至るところに転がっているものだと実感いたします。集合の考え方も、円の性質も、決して試験のためだけに存在しているのではありません。

機能面では、文字のやりとりだけでなく、画像の添付にも対応いたしました。答案やノートの写真をそのまま送っていただければ、内容を確認したうえで返信したり、授業前に回答することができます。既読の表示機能と、送信の取り消し機能も実装しております。書き間違いや誤送信は誰にでもあることですので、気兼ねなくお使いください。

さらに、このお盆休みに、内部の仕組みについても大きく手を入れました。データの保存先を、よりセキュリティ上も安全なGoogleのデータベースへ移行したところ、アクションにもよりますが、動作速度が従来のおよそ20~50倍にまで向上したことを確認しています(従来、約2秒かかっていたワンアクションが、平均0.057秒になったということです)。待たされることなくやりとりができるようになり、実際に使っていて気持ちのよいものになりました。

こうした改良の甲斐あって、以前と比べてコミュニケーションが格段にスムーズになったと感じています。お子さまの様子について気になることがあればすぐ共有できますし、ご家庭からのご質問にもスムーズにお応えできます。

今後も、塾の皆さまに使っていただきながら、少しずつ改良を加えてまいります。

徳進館進学ゼミナール
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