4月を迎え、新しい年度が始まりました。私は今年度、本塾の中学部で、慶進中学校の2年生と、公立中学校の3年生を主に指導してまいります。学年こそ異なりますが、どちらの生徒たちにとっても、中学課程の最後の学年であり、高校という次の段階へとつながる、大切な調整の時期にあたります。
塾の授業というと、「とにかく分かりやすく教えてくれる場所」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。もちろん、分かりやすい授業は塾として当然のことであり、本塾でもその点には常に意を尽くしています。しかし、私はそれだけで満足してはいけないと考えています。分かりやすさは入り口にすぎません。その先にある、学問本来の深みや面白さに少しでも触れさせることにこそ、塾という場の本当の価値があると思っています。
私自身、東京大学大学院での研究活動(端的に表現すると、二酸化炭素をガソリンに変換する、環境的な技術開発)を経て、現在の指導にあたっています。理系出身者として歩んできた道のりの中で得てきた知識や経験を、ただ受験のための道具として消費するのではなく、子どもたちの知的好奇心を呼び覚ます「奥行きのある授業」として還元したいという思いが、私が日々授業準備の中で大切にしている姿勢です。
例えば、英語の授業では、文法事項を一つひとつ正確に押さえることはもちろん大前提としつつ、それだけにとどまらない指導を心がけています。ネイティブ音源と連携した音読・リスニング指導を組み込み、英語を「目で読む言語」から「耳と口で扱う言語」へと拡張していく。また、英単語や前置詞の意味を、単なる訳語の暗記ではなく、その語が持つ本来のイメージとして掴ませる。たとえば「on」が「接触」を表すこと、「at」が「点」を表すことを体感的に理解できれば、未知の表現に出会ったときにも、自分の頭で意味を推測する力が育っていきます。
数学の授業では、解法の手順を覚えさせるだけでは終わらせません。「なぜこの式変形をするのか」「この補助線にはどんな意図があるのか」「この公式はどこから来たのか」など、一つひとつの解法の背後にある仕組みを、できる限り言葉にして伝えるようにしています。表面的な解き方を真似るだけでは、少し問題の見た目が変わっただけで手が止まってしまいます。しかし、仕組みを理解した生徒は、初めて見る問題に対しても、自分の頭で道筋を組み立てられるようになります。これこそが、高校数学、さらにその先の学びを支える本当の土台になります。
そして、私がもっとも力を入れて授業研究を続けているのが、理科です。理科は、私自身の専門に最も近く、最も得意とする科目でもあります。教科書の内容をなぞるだけではなく、自然現象の不思議や、身の回りで使われている科学技術のテーマと結びつけながら授業を進めることで、子どもたちが「理科って面白い」と素直に感じられる時間にしたいのです。なぜ鉄は錆びるのか、私たちが普段使っているスマートフォンの中ではどんな物理が働いているのかなど、こうした問いを授業の随所に織り込みながら、教科書の知識を「生きた知識」として受け取ってもらえるよう工夫しています。
新年度のこの時期、私が何より楽しみにしているのは、昨年度から持ち上がってきた生徒たちを、新しい学年として迎え入れることです。生徒たちが、また一つ学年を上げ、少し背丈が伸び、表情が引き締まって教室に入ってくる。その姿を見るたびに、教える立場としての責任の重さと、同時に、これからの一年への大きな期待を感じます。
特に、公立中学3年生は、いよいよ高校受験という大きな節目を迎える、勝負の一年です。ただ目の前の試験のためだけに勉強するのではなく、その先の高校生活、さらにはその先の人生を支える「学ぶ力」そのものを育てる一年にしたいと考えています。
本年度も、生徒一人ひとりの可能性を信じ、丁寧に向き合ってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。


