今日は化学Ⅱ受講者を対象とした化学実験を行いました。ここ2ヶ月程度、電気化学分野(電気分解、電池)の学習を行いましたので、その理論の再確認と、実際に製作を行い、現実は理論通りにはいかないことや、その効率について検証してもらうことを企画しました。
参加した塾生は、医学部、薬学部、理学部などを志望する宇部高・私立進学高の生徒ばかりで、やる気満々。今日の日を楽しみにしてくれていました。
使用する装置の多くは学生自身の手で製作してもらいました。まずは、電気分解で使用する純銅の棒を金鋸で切るところから。金鋸の歯の方向を確認して、引き切りであることを教え、1本1本切っていきます。意外と時間がかかり、不慣れな生徒には難しかったようです。続いて、めくれた銅棒の端を紙やすりで丁寧に丸めていきました。
銅棒を金鋸で切るのに時間がかかりました
紙やすりで銅棒の端を丸めます
次に、電気分解を行う容器の樹脂キャップの部分に銅棒を通すための穴を開けます。これも、口頭とホワイトボードでやり方を説明しただけで、生徒自身に電気ドリルを持たせ、作ってもらいました。ここでは、1名の器用な女子生徒がリードしてくれました。こうして、一人1つずつの装置が行き渡りました。
電気ドリルでの穴あけ
次に、電解液として使用する硫酸銅を必要な量だけ量るために、その質量を各自に計算してもらい、秤量(ひょうりょう)し、水に溶かして硫酸銅水溶液を作り、手製の電解装置に入れました。
美しい硫酸銅の結晶
次に、電流計の使用方法、電源装置の扱い方を説明し、各自で配線させました。中学の2年で電気回路については学習したはずですが、ここでも、机上の知識と現実に手を使うことのギャップがあり、思ったように組むことの難しさを感じたようです。安全のため、最終チェックは私の方で行いました。
完成した電気分解装置
いよいよ、ストップウォッチを構えて、スイッチON!同時に電流値を記録していきました。1分ごとに電流値を記録する中に、初期に急激に電流値が小さくなる組が何組か現れました。よく見ると、陽極に黒い被膜ができており、陽極は酸化極であることから、酸化銅(CuO)の被膜ができたためではないかと考え、ビンを攪拌(かくはん)してその被膜を振り落とすと、一気に電流値が回復しました。
このような現象も、教科書には一切出てこない新たな知識で、皆の驚きの様子がうかがえました。
グラフ化を済ませ、図積分の方法も説明しました。あとは各自がグラフの面積を求めることによって、流した電気量(クーロン)を計算してもらうだけです。
記録した電流値とグラフ
電気分解によって、陽極の銅が酸化され、銅イオンとなって溶解し、陰極では銅イオンが還元され、金属銅が析出します。ここが教科書の内容として重要なポイントになります。実際の銅棒を観察してみると、確かに陽極は細くなり、陰極は太くなっていました。これに気づいたときにも生徒から驚きの声が上がりました。
電気分解直後の様子
銅棒の直径の変化。肉眼でも一方は細く、他方は太くなっているのが分かります
そして、2本の銅棒の質量を測定し、その変化を記録しました。陽極は軽く、陰極は重くなっていることが確認できました。
精密天秤(0.001g計測)により測定します
それでは、銅イオンはどのように金属銅となって析出するのでしょうか。この様子を確認するため、顕微鏡の出番です。顕微鏡の扱いは皆、手慣れていました。
60倍程度で拡大すると、球状の銅のかたまりが無数に付着していることが分かりました。ここから、1つの核となる銅が付着すると、それを軸として球状に成長していくのではないかと推測できます。
顕微鏡で観察中
視野に写った析出銅。硫酸銅の微結晶も見られます