今年度の前半は外出自粛の要請などから教育関係の業者さんの多くも営業訪問などがなく、例年参加しているような受験トレンドなどの研修会の実施も見送られてきました。
8月に入ってようやく何件かのイベントの案内が入り、先日早速1つ目の研修会に参加しました。参加と言いましても、「オンライン形式」でです。
4月頃はこちらがオンラインで生徒たちを指導していましたので、逆にオンラインで受講することがどのようなものかを体感するいい機会にもなりました。この点についての私の結論として、もし主催者から感想の記入を求められたとすると、「移動の手間がなく便利であり、会場で参加していたときと同程度に知識の習得ができた。ただ、周りに人がいないため、緊張感に欠けるという印象」と答えると思います。
さて、研修会のワンシーンで昨年度の全国の公立高校の入試問題についての分析結果が紹介され、傾向を学ぶことができました。概略として、子どもたちが持っている知識を活用できるかどうかが問われ(活用重視といいます)、しかも問われる知識問題は難化傾向にあるというものです。
例えば石川県での出題を引用して、知識の難化傾向の例が紹介されました。つまり、理科(化学分野)で、エタノールの燃焼反応の化学式を書け、というものがありました。銅の酸化や水の生成などは定番ですが、ここ10数年はエタノールの燃焼という問題を高校入試問題で見たことがありません。
従来型である「銅の酸化」の場合は、「銅と酸素が化合する」という知識だけで考えることができるわけですが、エタノール(有機物)の燃焼問題の場合、有機物中の炭素は酸素と化合して二酸化炭素になる一方、同じく有機物中の水素は水になる、という複合的な知識がないと解くことはできません。有機物を燃やすと二酸化炭素と水ができることは1年生の教科書にも述べられているわけで、この知識をもとに有機物であるエタノールの燃焼の化学反応式を考えさせるという点で、難易度が高いものと考えます。
しかも、化学式の係数は、従来型の場合多くても「2」まででした(つまり多くは暗記できていた)が、エタノールの燃焼では「3」が登場します(C2H5OH+3O2→2CO2+3H2O)。従来より大きな係数も含めてうまく左辺と右辺のバランスを考えることができるかどうかという点でも難しいものです。
また、説明問題でも、正答率は5%以下になるだろうという天体の問題の出題が滋賀県でありました(下図)。
模範解答(例)は、「地球は地軸が傾いたまま太陽のまわりを公転しているため、初日の出のときは、昼と夜の境界の傾きが、犬吠埼と納沙布岬を結ぶ線の傾きより大きくなるから。」とありますが、「境界の傾き」を主語にできる生徒がどれくらいいるだろうか、と心配になります。
これらのことから、「記述力が多くの科目(特に国語、理科、社会)に共通して武器となる傾向が高まっている」ことが言えるでしょう。
中学生からも記述力を伸ばすことはできるのですが、数学・英語などで忙しいためなかなか集中して取り組む時間が取れないものです。従って「小学生からいかに記述力を育てておくかにかかっている」ということが活用力のベースになる、ということが私の結論です。
個人的には、活用力は表現力だと考えていますし、表現力は結局のところ記述力であり、客観力です。
このような教育的観点でさらに研究を進めていきます。