中学受験「算数」の意義【小学生】

中学受験算数(以下、受験算数)について、常々思うところを書いてみます。

受験算数に対して、「受験のため」だけの算数なのでは?と思われている方もおられるようです。結局中学で x とか y とかの「文字式」を習って解いていくので、小学校で無理してもあまり役に立たないと…。

このように思われるのはもっともなことです。

しかし、中学受験(その中でも、高めの水準の内容)をある年数教えていると、「受験算数は頭脳空間を広げるためのツールの宝庫である」という実感を強く持たざるを得ません。

まず、計算の分野では、複雑な分数の約分、通分、四則計算やかっこのついた複雑な式の計算は、公立中学の1年生のレベルを遙かに超えています。とはいえ、計算はあくまでも「技術」であり、単なるツールの域を出ません。

それに対して、旅人算などに代表される「算術」は、数学を構成する一つの軸だと思える「比」や「割合」の概念を鍛えるためのもので、決して旅人算そのものを解くために訓練しているのではありません。

子どものうちにこのような割合の観念を、高い水準で理解した人は、その後の数学の学習スピードが間違いなく高くなります(と、少なくとも長年「化学」という教科を教えていても、すぐ直感的に分かる人と分かりづらい人の差が「割合」の理解度の差と比例することは明白です)。

また、高校1年生で習う「数学A」の中に、図形の分野が出るのですが、これもまた受験算数と直結しています。

受験算数では、公立中学の3年生で習うような「線分の長さの比」「似た形の図形の関係(相似)」を5年生の段階で終えますし、恐らく中学3年生でも解くのが難しいような図形の問題に取り組みます。

中学受験算数2020b
受験算数の典型的な図形問題

頭が柔軟なうちだからこそ感覚で理解し、解けるというところがありますが、そのような感覚に慣れると、中学生や高校生になってもおもしろいように理解し、解くことができます。

また、条件を設定(仮定)し、試行錯誤し、検証するといった一連の「論理力」も鍛えられ、物事の理解力が向上しますし、国語力につながる「内容要約力」の向上も期待できます。

このような思考の経験は受験算数をおいて他ではできず、このような内容のオンパレードで展開される学習を毎週毎週積み重ねることの意義はとても大きいものがあります。

実際、受験算数は大学入試までつながる方法論ですし、それより本質的に大切なのは、頭をやわらかくし、イメージ力を向上させ、様々な物事を同時に処理する能力を広げている(つまり、生きる力を増やしている)ものだと日々実感しています。

このように奥の深い受験算数を、中学受験を狙う方にはもちろん、そうでない非受験の方にも学んで欲しいと思っています。

中学受験算数2020a
公立中学では3年生で習う図形問題の基礎を5年生で終えます

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