この春、九州大学の伊都キャンパスを訪ねる機会がありました。今年、本塾から九州大学に合格した生徒がこの広大なキャンパスで学び始めるのだと思うと、訪問の前から胸が高鳴る思いでした。
九州大学は、東京・京都・東北に次ぐ国内四番目の帝国大学として、1911年に九州帝国大学の名で創立された学校です。1912年からは医学部・工学部を擁する総合大学としての歩みを始め、その後、農学部、法文学部、理学部と学部を増やし、戦後の新制大学への移行を経て、今日の12学部体制へと発展してきました。120年近くに及ぶ歩みは、そのまま日本の近代高等教育の歴史の一頁でもあります。
そんな九州大学が長年の懸案であった分散キャンパスの統合移転を完了させたのが、2018年のことです。福岡市西区、糸島半島の付け根にあたる伊都の地に、約275ヘクタールという、日本でも有数の規模を誇る一大キャンパスが姿を現しました。
実際に足を踏み入れてみると、その広さは想像を超えるものでした。なだらかな丘陵地に、低層の校舎群が美しく配置され、建物と建物のあいだを学生たちが自転車で移動していきます。空が広く、風が抜け、振り返れば玄界灘の方角まで見渡せる。これまでの「都市の中の大学」という印象とはまったく異なる、新しい時代の知の拠点というにふさわしい光景が広がっていました。今年、本塾から合格した生徒が、これからの4年間、この場所で同年代の優秀な仲間たちとともに学び、議論し、ときに悩みながら成長していくのだと思うと、教える立場の者として、これほど嬉しいことはありません。
キャンパス見学を終えたあと、近隣にある「九大伊都 蔦屋書店」にも立ち寄りました。伊都キャンパスから徒歩でほど近い、研究施設・商業施設・住宅施設が一体となった複合タウンの中核を成す書店です。
実際に店内に入ってみて、まずその広さと開放感に驚かされました。天井が高く、書架が美しく並び、人文・自然科学から児童書、雑誌、洋書まで、選び抜かれた書籍が、ジャンルを越境するように配置されています。書店の中にはカフェや飲食店も同居しており、本を片手にコーヒーを楽しむ学生、子連れで絵本を選ぶ家族、ノートパソコンを開いて作業する人など、さまざまな人々がそれぞれのペースで「本のある時間」を過ごしていました。私もすっかり時間を忘れ、何冊かの本を手に取り、しばらくの間、その空間を満喫してきました。
教室の中だけが学びの場ではありません。キャンパスを歩く時間も、書店で偶然手に取った一冊との出会いも、すべてが大学生活を形づくる大切な要素です。今年、伊都の地に旅立った卒塾生が、勉学に励むのはもちろんのこと、こうした豊かな環境を存分に味わいながら、4年間を過ごしてくれることを、心から願っています。
そしてまた、これから受験に挑む後輩たちにも、いつかこうしたキャンパスを自分の足で歩く日が来ることを、目標として胸に抱いてほしいと思っています。


