金継ぎを試してみました

私事ではありますが、先日、自宅で長年愛用してきた小石原焼の青い大皿を、うっかり割ってしまいました。福岡県の東峰村を訪ねた折に求めたもので、ぽってりとした厚みと、深い青の釉薬の色合いに惹かれて、使用してきた一枚です。割れた瞬間に、思わず「あっ」と声が出ました。

割れてしまいました

破片を拾い集めながら、ふと、昨年の夏期講習で扱った江戸時代の単元のことを思い出しました。江戸時代のリサイクル文化を取り上げた回で、当時の江戸の町には「焼き継ぎ屋」や「金継ぎ」を生業とする職人が町を巡り、割れた陶磁器を修理して回っていたという話を生徒たちにしていました。瀬戸物の修理があまりに盛んだったため、新品の瀬戸物が売れずに瀬戸物屋が困ったという逸話が残っているほどで、江戸の人々がいかに「もったいない」という感覚を大切にしていたかが伝わる、印象深い一節でした。

割れた皿を前にして、ここで捨ててしまうのは作者に申し訳ないので、市販の金継ぎキットを購入し、自分でも修復に挑戦してみることにしました。

エポキシ樹脂で接着し、欠けたところも詰めていきます
真鍮粉を、付属の樹脂と混合します

もちろん、本来の金継ぎは、漆を使って破片を接着し、その上に本物の金粉を蒔いていくという、何か月もかけて行う伝統工芸です。室町時代に茶の湯文化の中で生まれ、戦国から江戸初期にかけて、茶人たちが愛蔵の茶碗を継ぐために発展させてきた、極めて日本的な美意識の結晶ともいえる技法です。

私が用いたキットは、漆の代わりにエポキシ樹脂の接着剤で破片を固定し、その上から真鍮の微粉末をレジンに溶かして塗っていくという、現代版の簡易キットなのですが。。

混合液を筆で塗ります

仕上がった皿を眺めてみると、(デザインセンスのなさは置いておいて)自分としてはなかなか気に入っています。真鍮の粉末でしかないのに、光の加減で本当に金のように輝き、深い青地を背景にして美しく感じられ、割れる前よりもむしろ味わいが増したようにさえ感じられました。完全に自己満足の世界ではありますが、割れて捨てるはずだった一枚が、こうして再び食卓に戻ってきてくれたことを、しみじみと嬉しく思いました。

2枚を並べてみました

生徒たちにも、「歴史を手で触れる」体験を大切にしてほしいと思っています。教科書に出てくる用語を覚えるだけではなく、その用語の背景を思い巡らせる習慣がつくと、歴史の学習は立体的なものになっていきます。歴史を学ぶことの本当の面白さは、そうやって、自分の生きている現代と過去とが、不意につながる瞬間にこそあるのではないかと思うのです。

割れた皿の金色の線を眺めながら、次の夏期講習では、生徒たちにどんな歴史の話をしようかと、今から考え始めています。

裏面の様子
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